「誰も知らない」を見に行った。

 あれですよ、カンヌで柳楽優弥氏が賞を取った映画。自分は母親役のYOUの演技が見たくて行ったのだが。
 やー、すごい映画だ。賞を取るだけある。はっきり言って、人にはすすめない。見に行きたい人は見に行くべきだけど、興味がないのに付き合いとかで見てはいけない映画。
 ストーリーはほとんどない。ある特殊な状況に置かれた子どもたちの様子(子どもたちにとっては「日常」)を淡々と描いている。ストーリーの流れを起承転結ということがあるが、この映画は起承転承という感じ。たとえが悪いかもしれないが、見終わった後の後味の悪さはエヴァの映画版なみ。
 子役がとても自然に役を演じている。っていうか、たぶん、演じていないと思う。ままごとに興じる時のように、それぞれの役になりきって「ごっこ遊び」をしている様子を映して繋げたような印象を受けた。テレビドラマで見る子役の演技が、いかに不自然なものであるかを思い知ってしまった。時間をかけて撮れる映画ならではだと思う。本当、映画はすごいな。
 かなり非日常的なことを描いているのだが、淡々としているし、映像やゴンチチの音楽が綺麗すぎてに非日常の出来事に見えない。その点は、たとえば吉本ばなな女史の作品に通じるものがあると思う。吉本女史の作品にある静かな感動や癒しはこの映画にはないんだけど。
 母親を演じたYOUの演技は、期待どおり神がかっていた。彼女以外の誰にもこの役はできなかっただろうなあ。
 この映画は自分的にはサイコスリラーに分類したい。あんな非日常な情景が日常に溶け込んでいるのは、スリル以外の何物でもないよ……。
 見所は日常が少しずつ壊れていくところかな。着ているものや部屋の状態の変化がリアルで見ごたえがあった。