砂漠の花嫁 Web公開版の後書きみたいなもの。

 冒頭で宣言しておきますが、今週中のダウンロード版アップは無理です。
 来月中には何とか……。


 *過去ログ案内
 ・同人誌版の後書き(登場人物の由来と執筆中のBGMについて)はこちら
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 おおよそ私がサイトにアップする時は、既に書き溜めているものを分割してアップしていく。今回も例にもれず、WanNe短編コンテストの投稿作品が元であり、それを何倍かの長さにして書き直したのが同人誌版であり、さらにその同人誌版に改稿を加えたものがWeb公開版だったりする。
 同人誌版を素直に分割アップすればいいものを、今回は相当、手を入れている。ストーリーはあまり変わっていないが、特にアカリの決心のきっかけになったエピソード(バスタイムに……というやつ)は、Web版にしかない。最終回でさも伏線のように扱っているが、書き足しているうちに、ふくらませたシーンを最終回を書く前に読み返して、書く直前に伏線的扱いにしただけという、まったく無計画なエピソードだった。だが、けっこうハマったので満足している。


 今回の主人公アカリは、自分が書いた作品のヒロインの中で最年長かもしれない。その割に、作品中でいちばん成長している(精神的に)のが不思議な気もする。最初にアカリが怒っているシーンを冒頭に持ってきた時は、どんなヒロインになるだろうかと心配してしまった。この冒頭シーンは、WanNe短編コンテスト版では、マモルよりの視点で書いたのでカットしてしまったシーンでもある。
 金策にここまで身を削っているヒロインも初めて。今までは、どっちかというと精神的に過酷な状況に置かれている設定ばかりだったので。

 例によって今回も、一見すると恋愛とか結婚を扱っているようで、実はそれを否定しているかのように取れなくもない、男女の恋愛以外の、人の絆がけっこうメイン。恋愛は否定しないけど、それ以外の人の絆も大切だよ、くらいのニュアンスでどうぞ。


 ネタの着想として、「困っていた時に助けてくれた人がその道の第一人者だった!」を書きたかった、というのがある。この元ネタはプロジェクトX「チェルノブイリの傷 奇跡のメス」。要約すると「すんごく手術が上手いお医者さんが日本から来たなあと思ったベラルーシの若い医師が専門書をめくっていたら、その手術の上手いお医者さんがその分野の権威として載っていてびっくり」。


 Web版は分割したストーリーごとに副題が付いている。
 DAYBREAK、EARLY MORNING、DAYRIGHT、AFTERNOON、ALL DAY LONGと一日の中である時間帯を連想させる言葉をつけてみた。もともと最初のストーリーにDAYBREAKと付けたかっただけなのだが、これもやってみるとそれぞれハマるのが面白かった。
 ここだけの話だが、「砂漠の花嫁」という同タイトルで商業作品(言うまでもなく他の人の作品です)があるのは検索して見つけてしまったあなたと私だけの秘密ということで、ひとつよろしく。


 いちおうSFのつもりなので単語にはそれなりに気を使っている。
 アカリの部屋に転がっている「データメディア」はCD-ROMとかDVDとかフロッピーとか、そういう現実に存在しているものを上げるとSFっぽさが薄れるのでなんとなく総称っぽく書いてある。それぞれ好みの物を想像してください。ちなみに私としては、以前から自作品で使っている(Gift for Youとか)「VM」(ヴィジュアル・分子シート/分子と書いてモルと読んでください)を推奨したい。
 同様に「携帯通信ユニット」も、要は携帯電話やPHSだったりするのだけど、そのまま書くと雰囲気が壊れるので。
 「電磁レンジ」は電子レンジの誤字ではなく、未来の電磁調理器だと思ってください。この場合のレンジは箱型ではなく、ガスレンジのイメージ。
 単語ではないが、「太陽熱を利用した発電装置」という概念は、たまたま執筆当時にニュースで、太陽光発電より、太陽熱で水を加熱して作った蒸気でタービン回して発電したほうが効率が良い、というのを聞いたので、さっそく取り入れてみた。

 マモルにココアを出したエピソードの元ネタは、名探偵ホームズ(宮崎アニメ・主演 広川太一郎氏)の「青い紅玉」より。子どもにはココアがいいらしい。

 ハーブの名前をいくつか出している。アカリが植物学の研究者ということもあるが、どっちかというと作者である私の趣味。マモルに出したハーブティーブレンドは、一般にアロマテラピーハーブティーブレンドなどで使われる名前ではなく、語感から想像の余地がある和名を採用している。ちなみにカミツレカモミール、トケイ草=パッション・フラワー、菩提樹=リンデン。私自身が安眠したい時に飲むブレンドでもある。ラベンダーが苦手というのも自分と同じ。

 アカリのバスタイムメニューは風呂では実践したことはないが、ルームフレグランスでなら実践したことがある。ゼラニウムは現在、好きな香りのひとつ。

 ラストは、十分にハッピーエンドだと思っているのだが、さて。


 「砂漠の花嫁」は、とあるチャットとあるSFオンライン作家氏に「読んでますよ」と突然告白されたり、タイムリーに日記で話題にしている方をみつけたりと、「オンライン小説って、本当にリアルタイムで読んでいる(読もうとしている)人がいるんだ……」と妙に実感してしまった思い出深い作品になった。